ちょっと前にいただいたご質問です。
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初めまして。
耳鼻科医さんのブログを見つけて少しお答え頂きたいと思い、コメをしました。
他覚的耳なりの治療法の事ですが答えられる範囲でお願いします。
蝦牛形メニエールの後遺症と思われますね。と耳鼻科医に言われました。治療法はないですとも言われました。
24時間バキバキやボキボキと鳴っております。
はや1年になります。
一般的に、他覚的耳なりの治療法はないのでしょうか?
もし、治療法があるようならば、どういった病院で通院したらよいですか?
なにか、アドバイスがあれば、頂きたいです。
お答え、宜しくお願いします。
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さて、他覚的耳鳴りとは一般の方には耳慣れない言葉かもしれません。
耳鳴り自体はポピュラーな現象で
多くの難聴の方が悩まされていますし、
大きな音を聞いたあとなどには健常耳の人でも「キーン」という耳鳴りを経験することが
しばしばあります。
しかしそれらは自分では聞こえても、
周囲の人にはわからない感覚です。
これに対し、他の人にも認識できるような耳鳴りを
「他覚的耳鳴り」と呼ぶことがあります。
多くの耳鳴りはこれに対し「自覚的耳鳴り」と言えますが、
耳鳴りは本来「自覚的」なのであえてこの言い方はしません。
「他覚的耳鳴り」を他人が聴く方法は、
その人の外耳道に耳を寄せて聴きとりますが、
耳鼻科では耳管通気に使うオトスコープというゴムのチューブがありますので、
これを患者さんと自分の耳に入れて確認します。
「自覚的」耳鳴りはキーン、ジーン、ゴーゴー、ジージーなどさまざまな音ですが
一般的には金属音にしろモーター音にしろ「連続的」な音です。
これに対し「他覚的耳鳴り」としては、
パキパキ、ピチピチ、サッザッ、などの断続音、クリック音がほとんどです。
多角的耳鳴りは耳の周囲の音が
外耳道経由でも聞き取れるわけで、
その原因はいくつか考えられます。
一つは筋肉由来。
口の開け閉めや、嚥下による耳管の開閉音が
鼓膜に反響して聴こえるもの。
これらは多くは「随意的」で自分で鳴らすことができます。
ただ、鳴らしたくないのに鳴っちゃうわけで、
不快に感じる方もいらっしゃいます。
また、耳管周囲筋や顔面筋、耳小骨についているアブミ骨筋の
「けいれん」でもカチカチ音、クリック音がします。
こちらは「不随意的」で24時間連続の方もいますし、
なったり治ったりという方もいます。
しゃっくりとか、疲れるとまぶたの筋肉がピクピク痙攣する、
あの現象を考えてもらうとわかりやすいです。
もうひとつのメジャーな要因は「血管性」です。
耳の近くには動脈が走っており、この血管雑音が聞こえる場合があります。
心臓の鼓動と同期していればそれと確認されます。
これは、自覚的にとどまってる場合が多いですが、
他覚的に感知できるほど大きい場合は、
心臓や脈管の異常がないか内科で調べてもらう必要があります。
その他、以前ブログで紹介した「耳管開放症」でも
まれに他覚的耳鳴りが聴取できる場合があります。
さて、他覚的耳鳴りの治療ですが、これは難しい。
そもそも、自覚、他覚を含めて耳鳴りの薬というものはありません。
自覚的耳鳴りはそのほとんどが内耳性難聴によるものなので
内耳性難聴が改善すればそれにつれて耳鳴りは改善します。
他覚的耳鳴りのうち、筋肉性、血管性のものはほとんど治療されていないのが現状でしょう。
ご質問の方の場合、どういったものが原因か不明ですが、
蝸牛型メニエールの後遺症で他覚的耳鳴りが起こる、
というのはワタシは聞いたことがないのでさらによくわかりません。
蝸牛型メニエールは内耳の病気なので、
普通、後遺症としての耳鳴りは「自覚的」なものですが。
耳鼻咽喉科で鼓膜の状態、難聴の有無等を調べてもらっているのなら
あとはさしあたって脳内CT,MRI等の画像診断でしょうか。
動静脈瘻や血管性腫瘍などは一応除外しておく必要があるでしょう。
あまりお役に立てずスイマセン。


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耳垢といえば、よく外来で
「子供の耳垢はどれくらいのペースで取ればいいんでしょう?」
などと尋ねられることがよくある。
答えは
「しなくて、イイです。」
などというと、たいていのお母さんはビックリした顔をする。
耳垢は汗腺、皮脂腺、、耳垢腺のある外耳道の入り口付近で
作られるため、ほっておいても自然に出てくる。
見た感じ相当たまっていても、聴こえには支障が無いし
あえて取る必要はない。
むしろ取ろうとして、奥へ押し込んだり、外耳道や鼓膜を傷つけてしまう場合もある。
きれいに取れたとしても皮膚のバリアである皮脂層を除去しちゃうと、
かえって外耳道の皮膚で細菌が繁殖して外耳炎の元になる。
そもそも耳垢は弱酸性で殺菌効果があるのだ。
そんなわけで、ほっておく、が正しい。
さて、人間を含めてほとんどの哺乳類の耳垢はほっとけば勝手に出てくるが、
唯一そうでない動物がいる。
さて、何か?
答えはクジラ類である。
彼らの耳垢は年齢とともに堆積し、
年輪のようになるのでクジラの年齢はその耳垢からわかるそうだ。
博物館で見たことあるが、なかなか立派なものである。
ところで、クジラは耳垢つまって困らないの?
これは、全然困らないはずだ。
次のうち、鼓膜がある生物¥はどれか
1.フナ 2.カエル 3.ワニ 4.スズメ 5.ネズミ
答え、1以外すべて。
そもそも、鼓膜というのは生物が進化の過程で陸上に上がったことにより、
空気を伝わる音を聴くために進化したものだ。
だから、両生類以上にあり、魚類にはない。
水中は空気中に比べてはるかに音がよく伝わるが、
それをとらえるのに鼓膜は無効で、
頭の骨に伝わる振動が直接内耳に伝わる。
これを、医学用語で気導聴力に対し骨導聴力という。
(看護学生諸君、テストに出すよ。)
クジラはいったん陸に上がった哺乳類が再び水中に戻ったモノなので
鼓膜も中耳もあるがつかわれることはなく外耳道は耳垢でふさがれてるわけだ。
ところで、サーファーなど、通年冷たい海水に入るヒトの外耳道は
骨増殖によって狭小化しこれを「サーファーズ・イヤー」と呼ぶ。
冷たい水から鼓膜を守るため、といわれてるが、
海洋哺乳類への進化なのだろうか?
あまちゃんは、どうなのかなあ?
(ちなみに「進化」とは世代を超えて情報が伝達されなければならないので
一代限りの形態的変化は「進化」と呼びません。念のため。)


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教えてください。
幼い頃から、耳垢が湿っています。中耳炎などは患った事がありません。
なので、耳鼻科にお世話になった事がないのですが、
これは一生このままなのでしょうか。
お忙しいところ、すみません。ご教示いただけますか?
いろんなご質問いただきますが、
これは答えやすいです。
耳垢には2種類あって、カサカサした乾いたタイプと、
べとべとした湿ったタイプがあります。
前者は粉耳とか、後者はヤニ耳などと呼ばれることもありますが、
これは遺伝的、生まれつきのもので通常は一生変わりません。
日本人では乾いたタイプのヒトが多く、
湿性のタイプは15,6%といわれていますが、
中国・韓国ではさらに少なく湿った耳垢は5~7%程度といわれています。
逆に欧米では90%以上、特に黒人では99.5%が湿性耳垢です。
英語で耳垢を「Ear Wax」と呼ぶのもこの辺のイメージです。
ヒトの汗腺にはエックリン汗腺という全身に分布し、
サラサラの汗を出す汗腺と、
アポクリン汗腺といって腋の下などの体の限られた部分に存在し
脂肪たんぱく質を含んだ汗を分泌する2種類の汗腺があります。
このアポクリン汗腺は外耳道内にも存在し、
それが多いヒトとほとんどないヒトがいます。
アポクリン汗腺が多く、活発なヒトは湿った耳垢になります。
腋臭の原因もアポクリン汗腺といわれており、
この2つは合併します。
日本人に比べ欧米人は体臭がキツイのはこの事が原因です。
日本人ではいわゆる「縄文人」の系統がアポクリン型、
「弥生人」が非アポクリン型ということらしいです。
だから、湿った耳垢はDNAに刻まれた情報なので、
一生変わることはありませんし、
ご両親やお子様に同じ耳垢のヒトがいるはずです。
ちなみにワタシは「湿ったタイプ」です。
ヒト以外の哺乳類はアポクリン優位なので、
湿った耳垢のヒトはケモノに近いのか。
でもアポクリン汗腺は、いわゆるフェロモンとしての機能なので、
湿性の耳垢のヒトはセクシーだ、
といえない事もない?


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先日、毎年恒例の友愛幼稚園父母の会で
講演を行ってまいりました。

(タイコは関係ないです。)
今回のお題は・・・

「中耳炎の話」
タイトルバックはこの間のJリーグ20周年記念試合ですが・・・。
いつも熱心に聞いてくださるのでありがたいです。

スライド原稿は休日や昼休みなどにシコシコ作るのですが、
実際に当院の外来での中耳手術の写真や鼓膜所見の他に
足らないものはインターネットで具合のいい画像をピックアップして
パワポで作っています。
「急性中耳炎」「起炎菌」などとキーワードを入れて
画像をググると様々な画像が出てきます。
いろいろ検索していると鼓膜の写真やイラストなどの中こんな画像がヒットしました。

あっ、これオレじゃん。
これはワタシ「オグラ」と耳鼻科の「マエハラ」先生と
ナースの「アヤ」ちゃんで作ってるユニット。
バンド名は3人の頭文字をとって「OMA」なのですが、
「OMA」とは「Otitis Media Acuta」で
ラテン語で「急性中耳炎」という意味でもあるのだ。
せっかくですのでスライドに入れました。(笑)

この画像の出典はこのブログ「ロックな耳鼻科」と思われますが、
一般の人が「急性中耳炎」を検索してこれ出てきたら
なんじゃこら、と思うだろうなあ。
まあ、そんなわけで子供の急性中耳炎について
まだ教科書にも載っていない最新の知見を交えて
1時間ほどお話させていただきました。

こういった内容の講演、もしご希望の方がいらっしゃいましたら、
保育園でも公民館でも出張いたしますので
当ブログまでお気軽にご相談ください。


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先日、またコメント欄にご質問いただきました。
一般閲覧不可なので、転載はしませんが、
5歳のお子さん(アトピーあり、喘息でキプレス、キュバール使用中、入院歴あり)が
副鼻腔炎の加療中であったと。
最初3カ月はマクロライド少量長期療法していたが
1月の風邪をきっかけに悪化、
その後家族にコメントなくセレスタミンシロップが
処方に追加され体重増加、顔がパンパンになったとのことで、
ステロイドの使用がわかり中止したという経緯です。
コメントの方はステロイドの使用で、
心配になったとのことです。
うーん、こりゃ、難しいですね。
いろいろ問題にする点もありますが、
今回はステロイドとセレスタミンの話題で行きましょう。
一般にステロイド剤というと副腎皮質ステロイドの事なので、
それに限った話をします。
(ドーピングなどで問題になるアナボリック・ステロイドは関係ありません。)
副腎皮質ステロイドは副腎から分泌されるホルモンで、
誰でも体内に持っています。
ステロイド剤は強力な抗炎症作用や免疫陽性作用を持ち、
アレルギー性疾患、膠原病、神経細胞の修復、臓器移植時等々
さまざまな疾患に使用されています。
耳鼻科領域だと突発性難聴や顔面神経マヒの症例には
特別な事情が無い限りほほ100%使われます。
しかし、ステロイドという薬、
これが、なかなか使い方がムズカシイ。
ちなみに代表的なステロイドである
プレドニゾロンの添付文書における用法用量を見ると
「通常成人には1日5ミリグラムから60ミリグラムを
1回から数回に分けて内服、症状、年齢に応じて適宜増減」
とあります。
普通は
「1回に1錠を一日3回に分けで服用」
などと書いてあるのが普通で、
せいぜいその半分とか倍量になるくらい。
しかし、5ミリから60ミリでは10倍以上の差があるし、
実際にはもっと少ない量を隔日で飲んだり、
逆に100ミリをドーンと使う用法もある。
こんな薬は他にはないです。
基本的に用法はお医者さんの裁量でなんでもあり、
ただし、副作用の関係でむやみに使うわけにはいかないのだ。
短期的には、胃腸症状、便秘あるいは下痢、食欲増進、
血圧上昇、糖尿病悪化、易感染性、
長期的には若年者の成長障害、骨粗鬆症、中心性肥満、胃潰瘍、白内障など多彩で、
中には不可逆的、重篤なものも多い。
でも、使い方によっては、これしかない、
というくらい有効な薬なので、
ここ一番に使う事は大いにアリなのだ。
ステロイドを上手に使う、
というのはある意味医者の技量の見せどころともいえる。
コメントの方はお話からアレルギー体質がかなり強そうなので、
「通常兵器」では無く、ステロイドが使われたんでしょうが、
残念ながらこればっかりは第3者には使用の適不適は判定できません。
ステロイドと聞いただけで過敏に反応する方が
たまにいらっしゃるが、それはマスコミの悪い影響ですね。
まあ、今回ステロイドの説明が無かったのは問題かもしれませんし、
2カ月近くというのはギリギリちょっと長いかなあ、という気がします。
ワタシだったら多分出しませんが、絶対出しちゃダメかっていうと
そうとも言えない。
あえて難治例にお医者さんが大丈夫と考える線を
勝負をかけて狙ったのかもしれません。
ところでセレスタミンという薬です。
これはベタメサゾンというステロイドと
抗ヒスタミン薬の合剤です。
ステロイドの強さをはかるのによくプレドニゾロン換算をしますが
セレスタミンのステロイド量はプレドニゾロン2.5ミリ分です。
少ない量ですので単発的に飲むにはまず問題ありませんが
数カ月にわたると副腎抑制をきたすと言われています。
ただ、合剤ゆえ、これをステロイドと説明しないで
処方される先生は時にいるようですが、
ワタシとしては説明すべきだ、と思います。
今回のトラブルもここにあるかもですね。
あるいは話したつもりになって忘れちゃったのかも。
院外処方なら薬局で説明があるはずですから院内処方だったんですかね。
キュバールもステロイドですが、
吸入薬なので全身的にはステロイドの影響は問題ないと思います。
同じく、最近の点鼻薬である
「アラミスト」「ナゾネックス」「エリザス」も
全身的な副作用を気にせず安心に使えるステロイドです。
そんなわけで、ことステロイドに関しては
画一的な事がいえませんので
今回の件に関しては明確なコメントは差し控えます。
ただし、花粉症の治療に
ステロイドの筋注をしたり、セレスタミンだけを
1か月も2カ月も飲むというのは
明らかに正しくないと思います。
うーん、何となく答えになってねー。


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今回は拍手コメントの方にいただいたコメントです。
個人を特定する情報が載ってないので、
一応、転載させていただきます。
いつもとっても興味深いお話と、私も小さい子供がいますので、勉強になるなあと思いながら拝見しております。息子は風邪を引き金に咳喘息になります。かかりつけの先生をとても信頼していますが、とにかくすごい患者さんの数でお昼に受け付けしても受診が夜10時をまわるこも。そんな時はよそを紹介されてしまうのですが、いくつかの他院は必ずリンサンコデインやアスベリン酸などの咳止めを処方されます。しかし、かかりつけの先生は咳止めは出しません。咳は止めずメプチンやプランルカスト、ムコダインといった感じです。本当のところ喘息の場合咳止めは使用しないほうがいいのでしょうか?だとすると、あまりにも咳止めを出されるお医者さんが多いです。ちなみに、現在6歳です。アレルギー数値は高いものの、項目別には該当せず、はっきり喘息と診断できないとの事です。お忙しいと存じますが、ご意見をお聞かせいただけると幸いです。
お昼に受付して、受診が夜10時過ぎ!
スゴイ、超人気医院ですね。
患者さんも大変だけど、
どっちかというとその先生のお体の方が心配になっちゃいます。
さて、今回のお話は「咳止め」です。
咳止めの可否については、咳そのものについて考える必要があります。
咳は本来、体の防衛反応で、
気道に入った異物等を排除する仕組みです。
間違って、気管に水が入っちゃったりすると、
咳こんで、むせます。
気管支や肺に水が入ると困るので体が防衛しているのです。
脳血管障害や加齢で咳反射が極端に低下した場合は、
食物が気管に流入していわゆる「誤嚥性肺炎」をおこしてしまいます。
咳が体を守っているのです。
痰は気道の分泌物が増えて性状がやや粘稠になったものですが、
感染がある時は白血球が攻撃した細菌やウイルスの残骸を含んでいます。
とすれば、これは咳で出してあげた方がいい。
また、喘息の場合はアレルギー反応により気道の分泌が過剰になり、
しかも気道が狭くなってたまっている状態。
とすれば、これは気管支拡張剤(メプチンやホクナリン)で気道を拡張し、
ムコダインやムコソルバンなどの去痰剤をつかい、
咳とともに外に出してあげた方がいい、
という理屈です。
よく「ホクナリンテープ」を
「咳止めのシールください」
と言ってくるお母さんがいますが、咳止めではありませんので。
この辺の仕組みは「急性胃腸炎」の下痢止めに似てますね。
ノロウイルスやロタウイルスによる感染性のウイルス性胃腸炎の時は
下痢によって早くウイルスを体外に出した方がいいので、
「ロぺミン」などのいわゆる下痢止めは「禁忌」です。
さて、咳止めの話に戻りますが
それでは、咳止めは常に使うべきではないのでしょうか。
ウイルスや細菌によってのどや気管の粘膜が障害されると、
気道の過敏性が亢進します。
すると少しの刺激で咳が出て、
激しく咳こんでしまいます。
実際にはそんなに痰などは無いのに、
炎症があるために咳センサーが誤作動するためです。
このような咳は苦しいですし、
咳こみによってさらののどの粘膜が荒れてしまいます。
こういう咳の時には中枢性の鎮咳薬、いわゆる咳止めを使います。
実際にはこれらが混在する場合もあるので、
気管支拡張薬を使いながら咳止めを使う、という場合もありますが、
純粋な喘息の咳には原則咳止めは使わないと思います。
プランルカスト(オノン)はアレルギー反応の化学物質である
ロイコトリエンの働きを抑える物質ですが
平滑筋収縮抑制などの効果から咳の場合にも時に使用します。
もちろん、喘息をお持ちの場合には発作予防として長期服用することもあります。
ただ、血液検査の数値などチェックせず、
喘息の診断があやしいのに、
咳の風邪をひいた後、発作予防と称して
延々と長期にわたって出す先生が時にいらっしゃるので、
これはちと問題だな、と思いますが。
コメントいただいた方のかかりつけの先生は、
そこらへんのところをきちっと考えられている先生のようで、
長時間待ちの人気クリニックであるのも頷けますね。
ま、そんなわけで、最近は昔と違って、
「咳は止めない」「下痢も止めない」「熱も下げない」
といった風邪への対処が主流になっています。
PL顆粒とかあのたぐい、最近処方されないでしょ。


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先週のスキーツアー、ブログで書いたように
日本海周りで6、7時間ほどかけて帰ってきたわけだが、
日帰り、自家用車参加のモヤシ大原は大変だったらしい。
彼は関越道も止まってると思い高速を使わず、
18号、碓井バイパス経由でのルートを試みた。
結果、午後1時半に斑尾スキー場を出て、
ひたすら渋滞にはまり、深夜12時の時点で
まだ、小諸!
結局、佐久に宿をとり、翌日朝イチで帰ったという。
後で、計算したところスキー場から小諸まで
時速4キロとのこと!
ご苦労さまでしたあ。
さて、話変わりますが、
先日こんなメールを頂きました。
はじめまして。
> ブログからたどり着きました、××と申します。
> もうすぐ2歳になる娘がいます。
>
> 保育園に通ってるのですぐに風邪をひき、ほとんどが鼻水の風邪です。
> 外には出て来ずに溜まってることが多いです。
>
> 病院ではムコダイン、ムコサールの粉の混合薬(2回/日)、ホクナリンテープ、
> ジキリオン3ミリ (夜のみ/日)
> の処方をしてもらってます。
> アレルギー性鼻炎の診断はついてません。
> ジキリオンは朝飲ませると、眠くなって保育園でご飯が食べれなくなることがあ
> るので夜のみです。
>
> ・去痰の薬と抗ヒスタミンの薬を一緒に飲ませると、かえって排出しにくくなる
> とネットで見たことありますが、
> 実際はどうなのでしょうか?
>
> ・鼻水が鼻から外に出ないで喉や奥で溜まってしまうのは何故でしょうか?
> 一見風邪をひいてないように見えます。個性みたいなものでしょうか?
>
> 現在は少し乳白色で喉がガラガラ言うほどではないですが、
> ハァハァしながらご飯を食べてます。
> 元々食に貪欲なタイプではないので、食欲が落ちてるというよりも食べづらくて
> 食べることが落ちてます。
> 夜も寝苦しそうな場面があります。
>
> ご意見頂けたら幸いです。
>
いやあ、大変そうです。
でもこういうのは良くあるんです。
さて、ご質問は
・去痰の薬と抗ヒスタミンの薬を一緒に飲ませると、
かえって排出しにくくなる
とネットで見たことありますが、
実際はどうなのでしょうか?
ジキリオンとはザジテンの後発品で一般名はケトチフェン。
発売当初は抗アレルギー剤の分類でしたが、
今では第2世代の抗ヒスタミン剤に分類されます。
一般に抗ヒスタミン剤は鼻汁の分泌を抑えるので、
鼻汁や痰などの気道分泌液が粘稠になり
喘息などの場合喀痰の排出を妨げる、
という先生もいます。
アクセルとブレーキを同時に踏んでる、などとおっしゃる先生も・・・。
ただ一般的に抗ヒスタミン剤の気道分泌に対する問題点は、
抗ヒスタミン剤が併せ持つ抗コリン作用によることが多いと思われます。
市販の風邪薬や花粉症の薬を飲むとやたら口が乾く、あれです。
古い、いわゆる第1世代の抗ヒスタミン剤にはこのような作用が強く、
痰の排出を妨げる要素はあると思われますが、
新しい世代の抗ヒスタミン剤になればなるほど、
そのような作用は軽減されています。
だから私自身はそれほど大きな影響があると思っていませんが、
どろどろのハナが出ていて、アレルギーでもなければ、
第2世代とはいえ抗ヒスタミン剤の効果はあまり期待できないでしょうね。
(しかも、ザジテンは第2世代の中では最も古いグループなので、
第1世代ほどではないにしろ抗コリン作用はあります。)
・鼻水が鼻から外に出ないで喉や奥で溜まってしまうのは何故でしょうか?
一見風邪をひいてないように見えます。個性みたいなものでしょうか?
個性ってこたあないよね。(笑)
これは、いくつかの事が複合しています。
まず、最初の風邪によりハナの中の粘膜の抵抗力、
具体的には繊毛運動といって粘膜を自分で掃除する力、
が阻害されます。
そのためにハナ水や塵埃がいつまでもハナにとどまり、
ハナの中にもともといるバイ菌が増殖します。
それを白血球が攻撃した残骸がいわゆる青っ洟です。
小さい子はそれを自分でハナをかんで除去することができないので、
またそれによって粘膜があらされ、鼻の繊毛運動が阻害されます。
以下、その繰り返し。
しかも、こういう状態の鼻粘膜は
ウイルスや細菌を自浄する機能が落ちてるわけですから、
またすぐ風邪をもらっちゃう。
寒冷によってハナ水が増えても同じ道をたどります。
乾燥は鼻水の水分を奪いかたいハナになってこれも粘膜を傷害します。
いつまでたっても治らない・・・・。
そこで、対策は
温かく、湿潤な環境をつくり、なるべく鼻汁を吸引除去、
あるいは鼻がかめるように訓練をして、
できるだけ、保育園を休ませる。(笑)
実際、年末年始のお休みで1週間保育園に行かないと、
特に2歳以下の子はぐっと良くなることが多いです。
まあ、ご家庭の事情で難しい面もありますよねー、
ウチだって下の子は6か月前から保育園預けてたし。
風邪も、また人生の経験なので、
そのうちきっとだんだん強くなりますが、
中耳炎だけは知らないうちになってる事もありますので要注意です。
それと、2歳くらいからだとアレルギー性鼻炎の合併、
3歳を過ぎると副鼻腔炎の合併にも気をつけましょう。
てなわけで、まだまだ寒い日が続きます。
みなさま、お大事に。


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年末の200人越えの、
駆け込み鼓膜切開連発の、
忙しいさなか、
小倉耳鼻咽喉科ではもう一つのプロジェクトが進行していた。
当院は2013年1月よりカルテを電子化します!
ついに、ウチも電カル導入だあ。
いつかは電子化だなあと思っていたが、
時代の趨勢でいよいよ導入を決定しました。
そんなわけで、夏前から機種選定、システム決定、
カルテ搬入、ソフト打ちこみ、などと着々と進んでまいった。
ホントは夏がヒマだからその辺で導入と考えていたのだが、
持ち前のだらだらした性格で逆に最も忙しいシーズンにずれこんでしまった。
導入当初はしばらく診療スピードや手際の面で、
患者さまにご迷惑をおかけすることがあるかと思いますが、
最終的には現在より効率的かつミスのない診療ができるようになると思います。
少なくとも、事務のマリちゃんに
「センセ、この処方箋の字なんて書いてあるんですか?」
という質問を受けることは無くなるはず。
(現状では、ほぼ毎日質問されてる・・・・。)


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