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8月2日のメモリー(第4話)



 前々々回からの続きです。
そちらから先にお読みください。



 茅野駅は八ヶ岳や蓼科高原の玄関口である。



 8月の夏山シーズン真っ盛りの朝、
駅からは色とりどりの登山服姿の人たちが
大きなリュックを背に、次々とはきだされてきて、
順次、各方面のバス停へと散ってていく。




 今日も天気がよさそうだ。




 そんな華やいだ雰囲気の中、
暗い顔をした若者が6人。



 「どうする、このあと。」


 「やっぱ、帰るしかねえだろ。1台じゃ無理だし。」


 「こっから、車に乗れないもんは電車で帰るか。荷物だけ車に乗せてもらってさ。」


 「ここから前橋まで、何線?どれくらいかかるの?」


 「さあな。」


 「フェリーや旅館に連絡入れないと・・。」




 オレは強い責任を感じて、ずっと黙っていた。




 ああ、オレがあんなバカなことしたばっかりに、
みんなに迷惑かけてしまった。




 一体どうしよう。




 せっかくの夏休みなのに・・・。






 その時、ふと、駅前にある看板が目にとまった。





 オレはとっさに口を開いた。

「いや、オレのせいで、すまん。
でも、ナントカ旅行に行こうよ。」


「どうやって?」


「あそこにレンタカーがある。
帰りにまたここ透るんだから、こっからレンタカー1台借りていこう。
オレが金だすよ。
今なら、まだ大阪のフェリー、間に合うよ。」


「レンタカーか。それなら行けるかも。」


「でも、オグラ、お前ダイジョブなのかよ、あんな事故った後で。」


「いや、オレは、大丈夫だよ。ケガもないし。」



 ホントは全然大丈夫じゃなく、気持ちは限りなく落ち込んでいたが、
仲間にこれ以上迷惑かけたくない、という思いで強がっていた。




 結局、レンタカー代は割り勘、ということで、
1台借りて再出発をすることにした。




 ただし、予算の関係で、エアコン付きはあきらめた。




 よーし、行こう。




 若干時間がタイトになったが、
予定通りのコース、諏訪インターから中央道に。




 名古屋からは名神高速道路にのる。




 大阪の阪神高速は首都高なみに複雑で、
ちょっとてこずったが、
それでも何とか夕方までに大阪港に着き、
無事フェリーに乗り込むことができてホッとした。



 夕日を浴びながら、車を船に乗せ、
やがて出港となった。



 長い1日の太陽がようやく沈もうとしている。






 夜、大部屋の喧騒を離れ、1人でデッキに出た。




 夜風に当たりながらぼんやり神戸ポートタワーの夜景を眺める。




 それまで、気を張っていたが、ふっと現実に戻った。




 ああ、車、無くなっちゃった。




 家庭教師のバイトに、夏休みは工場でも働き、
お金をためてやっと買った車。


 親父が死んで、ずっと自家用車の無かった我が家に再び車が来た。



 通学や旅行など個人的な用事だけでなく、
お袋を乗せて親戚の家に行ったり、弟の引越にも活躍したなあ。



 弟が浪人して予備校に入る時は、初めて都内を走ったし
1年後後入った大学が山形大だったため、初めて高速道路にも乗った。



 スキーやバイト、日常の足としても活躍した。



 もっとも、女の子が助手席に乗ってくれたのは数えるほどしかなかったが。



 5年前友人に付き合ってもらい、
足利じゅうの中古車屋をめぐって一目ぼれした白いクーペ。



 ハイオクのガソリン代はきつかったけど、
当時、排ガス規制エンジンの中で三菱の誇るサターンエンジンの100馬力は抜群だった。



 その上、ハッチバックはスペースが広く、
ギター、アンプはもとより、
後席を倒せば、ドラムセットだって運べた。




 前橋に帰ったらどうやってバイトに行こう。



 「しみずスーパー」もチャリで行かねば。





 故郷から遠く離れた船上から、夜空を仰いでため息をつく。



 でも、確かに、ひょっとして方向が悪かったら死んでたかもなあ。



 あの道の反対側は、崖になってはるか下に谷川が流れていた。




 と思うと、屋根の潰れたセレステが、
自らを犠牲にオレを救ってくれたような気もする。





 ああ、オレのセレステもお星様になっちゃったんだなあ。





 あの辺のキラキラした星かなあ。




 あ、あの星は「すばる」だから違うわ。
セレステ、三菱だし。

(スイマセン、ここ、フィクションです。真夏におうし座のすばるは見えないはず。)



 ともかく、そんな思いを乗せて船は瀬戸内の漁火の中を西に向かって進んでいった。



 ~次回、最終話です。



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コメント

あ。涙が出ちゃいました。
青春のひとこま。ご無事で何よりでした。
最終回が待たれます。

Re: コメントありがとうございます

お読みいただき、感謝です。
最初に買った車って、思い入れが一番強いですね。
最終回いかがでしたか。

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プロフィール

おぐぐー

Author:おぐぐー
昭和60年群馬大卒
開業医4人を中心としたロックバンドC.R.P.のリード・ボーカル&ギター担当
浦和レッズ・オフィシャル・サポーターズ・クラブ会員
家族:妻(耳鼻科医)1男1女1犬(柴犬)
http://ogujibi.com/

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